2025年12月13日

切手に描かれた伝説上の生き物たち−20.🦅 翼を持つ王者の謎! 切手が語る伝説の守護獣「グリフィン」の歴史−

ライオンの体とワシの頭と翼を持つ、神話上の生き物、グリフィン(Griffin)。

この強靭で威厳ある存在は、単なるファンタジーの産物ではなく古代から現代に至るまで、王権、知恵、そして財宝の守護を象徴する究極のシンボルとして、世界の歴史の表舞台に立ち続けてきました。

なぜ、グリフィンはこれほどまでに愛され、国家の象徴に採用されるのでしょうか? ヨーロッパ各国から発行された切手から、その壮大な歴史を読み解きましょう!

1. 起源は古代オリエント:知恵と財宝の守護者

グリフィンの起源は非常に古く、紀元前数千年の古代エジプトやメソポタミアにまで遡ります。

古代オリエントでは、ライオンは「地上の王」、ワシは「空の王」とされ、この二つが合体したグリフィンは、天と地を支配する絶対的な権力を象徴しました。

黄金の守護者: グリフィンが最も有名になったのは、スキタイなどの北方民族の伝説です。彼らは、グリフィンがアジア奥地の山々で黄金の鉱脈を守っていると信じていました。この「財宝の守護者」という役割が、後のヨーロッパの紋章学に取り入れられていきます。

2. 王権の証:「クイーンズビースト」に見るグリフィン(イギリス)
グリフィンは、特にイギリス王室において重要な役割を果たしてきてイギリス切手に描かれその威厳を現代に伝えています。

🛡️ イギリス王室の守護獣:エドワード3世のグリフィン

最初の切手(1998年発行)に描かれているのは、**「エドワード3世のグリフィン」**です。


グリフィン.イギリス.1998.jpg



「ライオン・オブ・イングランド」(イングランドの獅子)と対になる形で描かれています。

このグリフィンは、中世の最も強力な王の一人であるエドワード3世の紋章に由来し、王家の威厳と、力の象徴として使われました。

王冠を戴いたライオンと共に、盾(シールド)を守る姿は、グリフィンが国家と王室の神聖な守護者であることを示しています。

✉️ 現代に生きるグリフィン(イギリス)

2枚目の切手(2015年発行)は、現代の郵便用途にも使われる普通切手のデザインです。


グリフィン.イギリス.2015.jpg


真っ赤なグリフィンが堂々と描かれています。

これは、1953年にエリザベス2世女王の戴冠式でウェストミンスター寺院を守った**「クイーンズビースト」**と呼ばれる10体の神話上の動物の彫像の一つに由来しています。

国家のシンボルが、時代を超えて日常の切手に採用され続けているのは、グリフィンの持つ**「不朽の力」と「格式高さ」**が今なお尊重されている証拠です。

3. 新生国家の象徴としてのグリフィン(ラトビア)
グリフィンは、西ヨーロッパだけでなく、バルト海沿岸の東ヨーロッパ諸国の紋章にも深く根付いています。3枚目の切手(ラトビア、2015年発行)は、その最たる例です。

グリフィン.ラトビア.2015.jpg


ラトビアの国章: この切手は、ラトビア共和国の国章そのものです。盾の向かって右側(デクスター)を支えているのが、銀色のグリフィンです。

このグリフィンは、ラトビアの歴史的な地域の一つである**ヴィゼメ地方(Vidzeme)とラトガレ地方(Latgale)**を象徴しています。

国章は、国家の独立とアイデンティティを確立する上で非常に重要であり、グリフィンがその一部を担っていることは、この国が持つ強さと、歴史の深さを世界に示しています。

結論:グリフィンは歴史の「語り部」

古代の神話から王室の権威、そして新生国家のシンボルに至るまで、グリフィンは常に最も高貴で力強い役割を担ってきました。

切手という小さな紙片に凝縮されたグリフィンの姿は、私たちに過去の栄光と未来への希望、そして国家の揺るぎない精神を静かに語りかけているのです。

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2025年12月06日

切手に描かれた伝説上の生き物たち−19.🔥 フェニックス・不死鳥・火の鳥の背景と切手−

「フェニックス(Phoenix)」「不死鳥」「火の鳥」は、それぞれ異なる文化的起源を持ちますが、「死と再生」「不滅の生命」を象徴する聖なる鳥として広く共通認識されています。

◎フェニックス(Phoenix)

**古代エジプト神話の「ベンヌ(Bennu)」**が起源。太陽神ラーと結びつき、「ポイニクス」として古代ギリシャ・ローマ世界に伝播しました。自ら炎となって燃え尽き、その灰の中から再生するという伝説が特徴です。
太陽、再生、不滅の権力

◎不死鳥

**特定の文化に限定されない、一般的な呼称(総称)**です。西洋のフェニックス、中国の鳳凰など、永遠の命を持つ鳥を表す際に用いられる言葉です。
永遠の生命、不滅、復活

◎火の鳥

手塚治虫の漫画作品の題名・主要キャラクター名であり、日本で広く知られています。その血を飲んだ者に永遠の命を与える鳥として描かれ、**「生命の尊さ」**という普遍的なテーマを象徴しています。
永遠の命、生命、壮大な歴史

🕊️ フェニックスを題材とした切手の事例
フェニックスは、その「再生」の象徴性から、国家の再建や権威を示すシンボルとして切手にしばしば採用されてきました。

ギリシャ発行の切手(1967年)


兵士とフェニックス.1967ギリシャ.jpg


背景: 1967年4月21日にクーデターで成立した**軍事政権(「大佐のレジーム」)**の切手です。

図案: 兵士と共にフェニックスが描かれています。

意図: 軍事政権は、ギリシャの「再建」と「復活」を主張し、フェニックスを国家の権威と新生のシンボルとして用いました。


フランス領赤道アフリカ発行の「経済再建切手」(1941年)


不死鳥.フランス領赤道アフリカ.1941.jpg


背景: 第二次世界大戦中、ヴィシー政権(ナチス・ドイツに協力したフランス政府)と対立し、自由フランス側に加わった植民地です。

図案: フェニックスが描かれています。

意図: 大戦下の困難な状況から**経済と国家を立て直す(再建する)**という希望と決意を象徴しています。


日本発行の「20世紀デザイン切手第17集」(2000年)


火の鳥.日本.2000.jpg


背景: 20世紀を代表するデザインや出来事を切手化したシリーズです。

図案: **手塚治虫の漫画『火の鳥』**に登場する火の鳥(不死鳥)が描かれています。

意図: 日本のマンガ文化における不朽の名作であり、**「生命の根源」**という普遍的なテーマを表現した作品として選定されました。
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2025年11月29日

切手に描かれた伝説上の生き物たち−18.🐲 切手にみる古代の守護神「四神」−

四神(しじん)とは、中国の神話・思想に由来し、東アジア全域に広まった東西南北の四方を守護する聖獣のことでそれぞれが方位、季節、色を司り、古代の都や古墳を守る象徴として崇められてきました。

🐲 切手にみる古代の守護神「四神」のいわれ

四神(しじん)とは、中国の神話・思想に由来し、東アジア全域に広まった東西南北の四方を守護する聖獣のことでそれぞれが方位、季節、色を司り、古代の都や古墳を守る象徴として崇められてきました。


1. 東の守護神:青龍(せいりゅう)
切手 方位・季節・色 役割と象徴

東・春・青(緑) 川の流れや水を司り、豊穣や昇天の象徴。生命の始まりである春を象徴し、都を東側から守ります。

いわれ 龍は神の使いとされ、天に昇る力を持つことから、権威や出世、活力の象徴とされています。

2. 南の守護神:朱雀(すざく)

火と熱、そして快適さを司ります。鳳凰(ほうおう)に似た霊鳥で、永遠の命、平和、繁栄を象徴します。

朱雀が翼を広げた姿は、燃え盛る炎のように美しく、悪を払い、大きな幸福をもたらすと信じられています。南側は光が満ちる場所として尊ばれます。

3. 西の守護神:白虎(びゃっこ)

道路や鉱物、そして戦いを司る強力な神獣。邪を払い、権力や富を象徴します。

虎は百獣の王であり、特に白い虎は吉兆とされます。西側から侵入する邪気を追い払い、軍事的な守護の役割を担うと考えられていました。

4. 北の守護神:玄武(げんぶ)

水を司る亀と蛇の合体した神獣。長寿、永遠、そして安泰を象徴します。

亀は長寿、蛇は生命力や生殖能力の象徴とされ、二つが組み合わさることで不滅の生命力を表し北は最も静かで闇に包まれる場所であり、玄武はその安定した守りを固めます。

これらの四神は、古代の都(例:日本の平安京)の配置や、王族の墓である古墳の壁画(高松塚古墳、キトラ古墳など)に描かれ、その安定と永遠の繁栄を願う人々の信仰の核となっていました。

これらの切手は、国境を越えて受け継がれた東アジアの壮大な世界観を伝える、貴重な歴史の証とも言えますね。

切手は1980年台湾発行の「 創世神話の切手」で、世界の創造神とされる「盤古」を中心にして、上(北)には玄武、下(南)には朱雀、右(東)には青龍、左(西)には白虎の四神が配され、太陽には太陽を運行するとされる金烏が、月には月の満ち欠けを行うとされる蛙が描かれています。

四神.台湾.1980.jpg



切手は2003年日本発行の「特別史跡キトラ古墳寄附金付郵便切手」で、キトラ古墳石室内西面壁画の白虎、キトラ古墳石室内南面壁画に描かれた朱雀が描かれています。

白虎と朱雀.日本.2003.jpg


切手は1975年北朝鮮発行の「江西大墓四神図切手」の中の一枚で、玄武が描かれています。


玄武.北朝鮮.1975.jpg


切手は1973年日本発行の「高松塚古墳保存募金切手」の中の一枚で、青龍が描かれています。


青龍.日本.1973.jpg

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2025年11月22日

切手に描かれた伝説上の生き物たち−17.🕊天空を駆ける神馬:切手に刻まれた「ペガサス」のロマン−

ギリシャ神話に登場する翼を持つ天馬、ペガサス。その優美な姿は、古くから芸術や物語のモチーフとして愛されてきましたが、実は**「郵便」の歴史とも深い関わり**を持っています。

神話の結末と、切手の中に生き続けるペガサスの物語を紐解いてみましょう。

1. 神話の結末:オリュンポスへの飛翔

かつて英雄ベレロフォンは、ペガサスを駆って怪物キマイラを退治し、数々の武勲を立てました。しかし、その成功ゆえに彼は増長し、「神の領域」である天界(オリュンポス)へ昇ろうと試みます。

これを傲慢(ヒュブリス)と見た全知全能の神ゼウスは、一匹のアブを放ちました。アブに刺されて驚いたペガサスは暴れ、ベレロフォンは地上へと振り落とされてしまいます。

神話のその後 主を失ったペガサスですが、その聖なる獣性は神々に認められていました。そのまま単身でオリュンポスへとたどり着き、ゼウスのために「雷(いかずち)」を運ぶという重要な役目を授かります。そして最後は夜空に召され、「ペガスス座」として永遠の輝きを手に入れました。

2. 郵便史におけるペガサス:「速さ」と「信頼」の象徴

なぜ、ペガサスはこれほどまでに多くの切手に描かれるのでしょうか? それは、彼が**「神々のメッセージ(雷)を、天空を駆けて迅速に運んだ」という伝説が、近代郵便、特に「速達」や「航空郵便」の理想**と重なったからです。

世界各国の切手から、そのロマンを見ていきましょう。

スペイン(1905年):至急便のパイオニア
[Image of: ペガサス.スペイン.1905.jpg] (1905年発行 ペガサス航空便・至急便切手)


ペガサス.スペイン.1905.jpg


20世紀初頭、通信手段が近代化する中で発行された一枚で切手には**「CORRESPONDENCIA URGENTE(至急便)」**の文字が見えます。

翼を大きく広げ跳躍する姿は、当時の人々が郵便に求めた「緊急性」と、確実に相手に届けるという「使命感」を象徴しています。

まだ飛行機が一般的になる前の時代、ペガサスは人類にとって「最速」のイメージそのものでした。

イタリア(1968年):デザインされた「速さ」
[Image of: ペガサス.イタリア.1968.jpg] (1968年発行 速達切手)

ペガサス.イタリア.1968.jpg


デザイン大国イタリアの切手には、隅に**「ESPRESSO(速達)」**と記されています。 古代ローマの彫刻を思わせる力強いタッチで描かれたペガサスは、イタリア郵政において長らく速達郵便のシンボルとして採用されてきました。ここでもペガサスは「通常よりも速く」という特別なサービスを視覚的に伝えています。

ギリシャ(1988年):神話の源流として
[Image of: 1988ペガサス.ギリシャ..jpg] (1988年発行 県庁所在地シリーズ・レフカダ島)


1988ペガサス.ギリシャ..jpg


ペガサス発祥の地、ギリシャからは「県庁所在地シリーズ」の一枚。 実は、古代ギリシャの都市国家コリントス(およびその植民都市であったレフカダ島など)では、紀元前の銀貨(スタテル貨)にペガサスを刻印していました。この切手は、単なる神話の挿絵ではなく、自国の古代貨幣や歴史的アイデンティティを誇るものとして描かれています。背景の青は、エーゲ海の空と海を連想させます。

アイルランド(2000年):国境を越えるインスピレーション
[Image of: image_7019e3.jpg] (2000年発行 グリーティング切手 -神話上の生き物-)


ペガサス.2000.アイルランド.jpg


「ÉIRE(アイルランド)」の切手にもペガサスが登場します。 ギリシャ神話の生物でありながら、その「自由な精神」や「芸術的インスピレーション(ペガサスが蹄で蹴った場所からは、詩の源泉となる泉が湧いたとされる)」は、国や文化を越えて愛されています。

まとめ

ペガサスの切手は、単に美しい動物を描いたものではありません。そこには、**「神々の速さで、大切な便りを届けたい」**という、いつの時代も変わらない郵便事業の願いが込められています。

小さな切手の中に、古代の神話と近代の郵便史が交差する――。 これこそが、ペガサス切手収集の醍醐味と言えるでしょう。
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2025年11月15日

切手に描かれた伝説上の生き物たち−16.❄未確認動物(UMA)の金字塔:イエティ(雪男)の科学的検証−

イエティ(Yeti)は、世界の未確認動物(UMA)の中でも最も有名かつ、長年にわたり科学者や探検家の探究心を刺激し続けてきた伝説の生物です。

ここでは、この切手が描くロマンを科学的な視点で掘り下げ、最新のDNA分析結果を交えながら、イエティの正体に迫ります。

1. 伝説と目撃情報の起源

イエティの伝説は、ブータンやネパール、チベットといったヒマラヤ山脈周辺の現地住民の間で、古くから「メーテ」(人熊)や「イェティ」(岩場の住人)といった名で語り継がれてきました。

目撃証言の共通点: 身長は2〜3メートル、全身が白や茶色の毛で覆われ、二足歩行をするとされています。

決定的証拠の登場: 1951年、イギリスの登山家エリック・シプトンがエベレスト付近で撮影した巨大な足跡の写真が世界中に衝撃を与え、「雪男」ブームを巻き起こしました。

このブータンの切手(1985年発行)は、まさにこの伝説と目撃情報が世界的に広まった時期に発行され、ブータンが持つ神秘的なイメージを象徴しています。


イエティ.jpg



2. 🔬 科学的分析:DNA鑑定が導き出した「正体」

イエティの存在を巡る長年の論争に終止符を打つ可能性のある科学的な検証は、主に**「イエティの毛」や「糞」とされる遺留物**のDNA分析によって進められてきました。

最新の分析結果(2014年・2017年)

複数の国際的な研究チームが、世界中の博物館やUMAハンターから収集された「イエティの遺留物」とされるサンプル(毛髪、骨、糞など)の**ミトコンドリアDNA(mtDNA)**を解析しました。

イエティの毛(とされるサンプル):ほとんどのサンプルが、ヒマラヤヒグマ(Himalayan brown bear)やチベットヒグマ、アジアクロクマなど、現地に生息する既知のクマの種のDNAと一致しました。

そのことからイエティ」の正体は、高地で見慣れないクマが二足で立ち上がった姿や、動物の足跡が雪の上で融けて巨大化・変形したもの(錯覚)である可能性が極めて高いと強く示唆されました。

絶滅した類人猿説の否定

かつては、「数万年前に存在した巨大な類人猿ギガントピテクスの生き残りではないか」という説もありましたが、DNA分析によって発見された証拠はありませんでした。

3. 結論:イエティは「幻想」か「希望」か

ブータン切手に描かれたイエティの図案は、未確認の巨大な霊長類というロマンを体現していますが、現在の科学的コンセンサスは以下の通りです。

「イエティ」を独立した未確認の霊長類として裏付ける信頼できる科学的証拠は存在していません。

しかし、この事実は、ヒマラヤの過酷で広大な未踏の地に対する人々の畏敬の念や、「まだ見ぬ生命がいるかもしれない」という探究心を否定するものではありません。

イエティは、科学的にはクマの誤認である可能性が高いとしても、ブータンの切手が象徴するように、人類の夢とロマン、そしてヒマラヤの神秘的な大自然を永遠に語り継ぐ**「伝説の使者」**として、これからも私たちの心を惹きつけ続けるでしょう。



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2025年11月08日

切手に描かれた伝説上の生き物たち−15.あなたの船を飲み込む、伝説の海の怪物「クラーケン」の正体とは?−

深海には、私たちの想像をはるかに超える巨大な怪物が潜んでいるかもしれません。その中でも、古くから船乗りたちを震え上がらせてきたのが、伝説の怪物**「クラーケン」**です。

ノルウェーの伝承に登場するこの海の怪物は、巨大なタコ、あるいはダイオウイカのような姿で語り継がれその大きさは、船をたやすく飲み込み、中には島と見間違うほどの巨体を持つとも言われています。

◎漁師たちの恐怖:クラーケン目撃談の真相

クラーケンの伝承は古く、13世紀のアイスランドの文献にもその記録が残されていますが、特に恐れられたのは18世紀にかけて多くの船乗りたちが、船を襲い、沈没させる恐ろしい怪物としてクラーケンを報告しました。

このクラーケン伝説の正体として、最も有力視されているのが**「ダイオウイカ」**なのです。

実際に、1939年にはノルウェーの漁師によって、体長13メートル、触腕だけでも8.7メートルにもなる巨大なダイオウイカが捕獲されています。

しかし、ダイオウイカが実際に船を襲ったという記録はありません。

にも関わらずなぜ船乗りたちは、ダイオウイカを「船を沈める怪物」として語り継いだのでしょうか?

それは、巨大なイカが海面に浮上した際の特異な現象が関係していると考えられています。

巨大なイカが海面で体を揺らすと、まるで嵐が起きたかのように海水が激しく波打ちます。

これを見た船乗りたちが、嵐の原因を「海の怪物」の仕業だと考えたのかもしれません。

つまり、クラーケンは実際に存在する巨大なイカの姿と、人々の恐怖が生み出した想像力が合わさって、伝説的な怪物となったのです。

◎今も語り継がれる深海のロマン

クラーケンは、今も私たちの想像力を掻き立て続けています。

2020年フランス領南極から発行された切手では、船を襲うクラーケンの姿が、南極の海の生物と共に描かれています。


クラーケン.2020.仏領南極.jpg



1990年カナダの「伝説の生き物切手」にも、その圧倒的な存在感が描かれています。


クラーケン.カナダ.1990 - コピー.jpg



これらの切手は、クラーケンが単なる伝説ではなく、深海に潜む未知の生物への畏怖と、人々のロマンを象徴する存在であることを物語っています。

あなたは、深海に眠るもうひとつの「クラーケン」を、信じますか?
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2025年11月02日

切手に描かれた伝説上の生き物たち−14.なぜ、魔女は醜い老婆の姿になったのか?その悲しき歴史の真実−

ほうきにまたがり、空を飛び、妖しい魔法を使う。私たちが思い描く魔女の姿は、とがった鼻の醜い老婆に、黒い三角帽、そして不気味なマント。

しかし、このイメージは、実はキリスト教の歴史によって作られたものだということをご存知でしょうか?

古代ヨーロッパでは、精霊や自然の力を借りて、病気を治したり、幸運をもたらしたりする女性たちは、尊敬の念を持って見られていました。

しかし、キリスト教が広まるにつれて、これらの女性たちの良いイメージは徐々に「邪悪な存在」へと変えられていきます。

◎悪魔と契約した人々

15世紀になると、魔女は単なる呪術師ではなく、悪魔と契約を結び、超自然的な力で人々に災いをもたらす存在と定義されるようになりこの概念が広まると、無実の人々を次々と処刑する**「魔女狩り」**がヨーロッパ中で行われるようになります。

少しでもキリスト教の教えと違う行動をしたり、あるいはただ単に人から嫌われていただけで「魔女」として告発され、拷問の末に無実の罪を自白させられ、火あぶりの刑に処された人々は、数えきれないほど存在します。

私たちが知っている「魔女」の醜いイメージは、この恐ろしい歴史の中で、魔女狩りを正当化するために定着させられたものなのです。

◎現代に残る魔女の物語

そんな悲しい歴史を持つ魔女ですが、現代ではハロウィンや童話の中で、エンターテイメントとして親しまれています。

フィンランド、ベルギー、フランス、イギリス領ジャージーなどから発行された切手には、ほうきに乗って空を飛ぶ魔女が描かれ、ハロウィンやイースターの楽しい象徴となっています。


魔女.フィンランド.2002.jpg


魔女.2004.ベルギー.jpg

魔女.フランス.2004.jpg

魔女切手.2022.イギリス領ジャージー.jpg


イギリス領ガーンジー島が発行した切手は、魔女の夜の集会や、生贄にされる魔女など、昔から語り継がれてきた魔女の物語を、神秘的なアートとして表現しています。


魔女.カーンジー島.2022.jpg


これらの切手は、過去の悲劇を風化させることなく、魔女という存在が持つ歴史的な背景と、現代の文化的な象徴の両方を伝えています。

魔女の物語は、ただのファンタジーではありませんそれは、人々が信じたもの、そして信じなかったもの、その両方が生み出した、現実の歴史なのです。
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2025年10月25日

切手に描かれた伝説上の生き物たち−13.あなたの心にも潜む、もうひとりの自分−『ジキル博士とハイド氏』の真実−

もし、あなたの内側に「善」と「悪」という正反対の人格が共存していたとしたら? そして、その「悪」が、あなたの人生を破滅へと導いていくとしたら?

ロバート・ルイス・スティーヴンソン(1850〜1894)が1886年に発表した小説**『ジキル博士とハイド氏』**は、そんな恐ろしい問いを投げかけ、世界中の人々を震え上がらせました。

物語の主人公は、高名な医師ジキル博士。彼は人間の善と悪を分離する薬を開発し、自らそれを服用します。

すると、彼の善良な人格は消え、醜く邪悪な別人格**「ハイド」**へと変身してしまうのです。

「ハイド(Hyde)」という名前は、まさに「隠れる(hide)」から来ており、ジキル博士の心の奥底に隠された悪の顔を表しています。

この物語は、今日でも**「解離性同一性障害(二重人格)」**の代名詞として使われるほど、人間の心の闇を深くえぐり出しました。

◎誰も知らないもうひとつの顔:実在した「ジキルとハイド」

スティーヴンソンがこの物語を生み出した背景には、実際に存在した2人の人物の人生が大きく影響しています。

ウィリアム・ブロディー(1741〜1788):18世紀のエジンバラに実在した、市民から尊敬される市会議員。昼間は模範的な市民として振る舞いながら、夜になるとギャンブラーや泥棒に身をやつしていました。

彼の二重生活は18年間も続き、最終的に捕らえられ処刑されました。

ジョン・ハンター(1728〜1793):18世紀のイギリスを代表する外科医で昼間は「近代外科学の父」として知られる偉大な医師でしたが、裏では解剖用の死体を調達するために墓荒らしをしていたとされています。

彼の屋敷は、表から見ると立派な病院、裏には死体の搬入口があるという、まさにジキル博士の家そのものでした。

このように、私たちの知らないところで、誰でも「ジキルとハイド」のような二面性を持っているのかもしれません。

この物語の魅力は、単なるフィクションではなく、人間の本質的な葛藤を浮き彫りにしたことにあります。

◎切手にも刻まれた、二重人格の肖像

『ジキル博士とハイド氏』は、そのセンセーショナルな内容から、切手の世界でもたびたび取り上げられてきました。

1994年クック諸島の切手には、悪の化身ハイド氏の姿が描かれています。


ハイド.クック諸島.1994.jpg

1997年イギリスの切手は、ひとつの顔の中にジキル博士とハイドが描かれており、人間の心に潜む二面性を象徴的に表現しています。


ジキルとハイド.1997.イギリス.jpg


1969年サモアの切手にはスティーブンスとジキル博士とハイドが描かれています。

スティーブンスとジキルとハイド.1969.サモア.jpg

これらの切手は、スティーヴンソンの生誕地であるサモアや、彼自身を描いた切手と共に、この不朽の名作が時代を超えて私たちに問いかけ続けていることを物語っています。

あなたは、もうひとりの自分と向き合う勇気がありますか?
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