2026年01月24日

切手に描かれた伝説上の生き物たち−25.怨念が紡いだ日本一の復讐譚:お岩さんの叫び−


日本でもっとも有名で、もっとも恐ろしい復讐劇、**『東海道四谷怪談』**の世界へご案内します。

「恨めしや……」 その一言で日本人の背筋を凍らせる、不朽の怪談。それが、江戸時代・元禄の事件を基に創作された『東海道四谷怪談』です。

非道な夫・田宮伊右衛門に裏切られ、毒を盛られ、無残に命を奪われたお岩。しかし、物語はそこから始まります。幽霊となって現れた彼女は、執念深く、残酷に、自分を裏切った者たちへ復讐の牙を剥くのです。

歌舞伎、映画、テレビドラマ……時代を超えて語り継がれるこの物語には、単なる恐怖だけでなく、女性の悲しみと凄まじい意志が宿っています。

◎現代にも続く「お岩詣で」の掟

お岩さんの怨念は、物語の中だけにとどまりません。 演劇界には**「お岩さんを演じる役者やスタッフは、必ずお岩さまの墓所を詣でなければならない」**という、厳格な習わしがあります。これを怠ると不吉なことが起こると言われ、令和の今でも、その信仰と畏怖は守り続けられています。

私自身も幼い頃、映画の上映中の舞台袖に、無事故を祈願してお岩さまが祀られていた光景を今でも鮮明に覚えています。それは、恐怖を超えた「敬意」の現れだったのかもしれません。

◎小さな紙面に宿る江戸の「闇」と「美」

世界には、日本の幽霊を「芸術」として捉えた美しい切手が存在します。

モルディブ発行「日本美術 - 幽霊と悪魔」(2003年)
南国の島国モルディブが発行した、日本美術のダークサイドに光を当てた異色の一枚です。


お岩.モルディブ.2003.jpg



描かれた意匠:春江斎北英『百物語のお岩』 江戸時代後期、大坂で活躍した浮世絵師で北英による作品が選ばれています。描かれているのは、夫・伊右衛門(演:二代目 嵐璃寛)に襲いかかるお岩の姿。

破れ提灯の怪 この切手の最大の見どころは、ボロボロに破れた提灯からお岩の顔が浮かび上がる不気味な構図です。

実はこれ、あの天才絵師・葛飾北斎が描いた有名な『百物語』のデザインをオマージュ(拝借)したもので江戸の絵師たちが競って描いた「恐怖の美学」が、時を超えて切手として蘇りました。

怨念はやがて、伝説の芸術へ

お岩さんの物語は、ただ怖いだけではありません。それは、虐げられた者の叫びであり、時代を超えて人々を惹きつける強烈なエネルギーに満ちています。 切手の中のお岩さんと目が合ったとき、あなたはそこに何を感じるでしょうか。
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2025年10月08日

ノーベル賞ウィーク−2.ノーベル化学賞−

【祝】科学の真理に迫る!ノーベル化学賞メダルに隠されたデザイン秘話と日本の偉業

スウェーデン王立科学アカデミーは2025年10月8日、2025年のノーベル化学賞を、北川進・京都大特別教授(74)ら3人に授与すると発表しました。

化学賞は2019年の吉野彰氏に続き9人目。

【科学の夜明けを照らす日本のMOF研究】

ノーベル賞メダルが象徴する「自然の真理の探求」は、日本の研究者によって現代も続けられています。

京都大学特別教授である北川進氏が開発した多孔性材料「金属有機構造体(Metal-Organic Frameworks: MOF)」は、まさにその探求の結晶の一つです。

MOFは、金属イオンと有機分子がレゴブロックのように規則的に結合してできる、微小な穴が無数に開いた特殊なスポンジ状の材料でこの「穴」のサイズや形状を自在に設計できるのが画期的で、その特殊な構造を生かして特定の気体だけを吸着したり、放出したりすることが可能です。

【MOFの応用が期待される分野】

環境問題への貢献: 大気中から特定の温室効果ガス(CO2など)のみを効率よく分離・回収する技術。

エネルギー貯蔵: 水素や天然ガスを高密度で安全に貯蔵する技術。

MOFの研究は、地球規模の課題解決に直結する未来の技術として、世界中から大きな注目を集めています。

【科学の進歩は止まらない】

日本は、2019年にリチウムイオン電池開発で吉野彰氏がノーベル化学賞を受賞するなど、常に世界の科学界に貢献し続けています。

科学界の最高峰であるノーベル賞。その栄誉を象徴するメダルには、科学の本質を表現した奥深いデザインが施されています。

今回は、日本の世界的な研究テーマを軸に、ノーベル化学賞のメダルにまつわるストーリーと、科学への探求心についてご紹介します。

◎ノーベル化学賞メダルに秘められた哲学

ここで紹介しているのは、1978年にグレナダ領グレナディーンから発行された「ノーベル賞切手」の一枚でここには、ノーベル化学賞(物理学賞と共通)のメダルが描かれています。


1978年グレナダ領グレナディーン発行の「ノーベル化学賞.jpg

1. 表面のデザイン(全賞共通)

メダルの表面は、すべてのノーベル賞(平和賞以外)で共通のデザインです。

賞の創設者であるアルフレッド・ノーベルの横顔の肖像が力強く描かれています。

2. 裏面のデザイン(物理学賞と共通)

化学賞のメダルの裏面は、物理学賞と共通で、非常に哲学的で象徴的な図柄となっています。

宝箱を持ち雲の中から現れた自然の女神のベールを、科学の神(科学のゲニウス)が持ち上げて、その素顔を眺めている姿が描かれています。

これはまさに、**「自然の奥深くに隠された真理を、科学の力で解き明かそうとする探求者の姿」**を象徴しています。

メダルに刻まれたラテン語の「NATURA」(自然)と「SCIENTIA」(科学)の文字が、このテーマを強く裏付けています。


メダルの裏面に刻まれた、自然のベールをめくる科学者の姿は、いつの時代も変わらぬ知的好奇心の炎を示しています。

私たちの日常を豊かにし、未来を変えるかもしれない科学の探求は、これからも力強く続いていくでしょう。
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2025年09月06日

切手に描かれた伝説上の生き物たち−8.神秘の使者、ユニコーン−

こんにちは!今日は、古くから人々を魅了し続ける伝説の生き物、ユニコーンについてのお話と、その美しい姿が描かれた切手をご紹介したいと思います。

【太古の昔から人々を魅了するユニコーン】

ユニコーンは、額に一本のねじれた角を持つ、伝説上の一角獣です。その姿はしばしば純粋さ、優雅さ、そして力強さの象徴とされてきました。

古代ギリシャの文献に初めて登場し、中世ヨーロッパではその神秘的な力が信じられ、多くの物語や芸術作品に描かれるようになりました。

ユニコーンの角には解毒作用があると信じられ、病を癒やす奇跡の力を持つとされて、その角は「アリコーン」と呼ばれ、非常に高価なものとして珍重されたと言われています。

伝説では、ユニコーンは非常に臆病で、純粋な心の持ち主でなければ近づくことすらできないとされています。

特に、清らかな乙女にしか心を開かないという逸話は有名で、多くの絵画やタペストリーにその姿が描かれています。

【世界中の切手に息づくユニコーンの姿】

そんな魅力的なユニコーンは、世界中の切手にも数多く登場し、私たちにその神秘的な姿を見せてくれています。

切手は、その国の歴史や文化、自然などを伝える小さなキャンバス。ユニコーンが描かれた切手には、それぞれの国が育んできた伝説やイメージが凝縮されています。

例えば、

1939年 イギリス発行「セントジョージ6世切手」: この切手には、イギリス王室の紋章に描かれたユニコーン(切手右)が登場し、ユニコーンはスコットランド王室の紋章獣であり、イングランドとスコットランドの統一を象徴していて力強くも優雅なユニコーンの姿が、格式高いデザインの中に描かれています。


ユニコーン.イギリス.1939.jpg



1987年 イギリス発行「シスル騎士団復活300周年記念切手」: シスル騎士団はスコットランド最高位の騎士団であり、その象徴であるユニコーンが誇らしげに描かれていてこの切手は、ユニコーンが単なる伝説上の生き物ではなく、国の歴史や伝統に深く根ざした存在であることを示しています。


ユニコーン.イギリス..jpg



2009年 イギリス発行「神話切手」: イギリスの豊かな神話の世界を紹介するこのシリーズでは、幻想的な雰囲気のユニコーンが描かれて現代的なイラストで表現されたユニコーンは、その神秘性をより一層際立たせています。


ユニコーン.イギリス.2009.jpg



1964年 フランス発行「絵画切手」: フランスの有名なタペストリー「ユニコーンを伴う貴婦人」の一部が描かれています。

このタペストリーは、中世ヨーロッパにおけるユニコーンの純粋さと愛の象徴としての側面を美しく表現しており、切手からもその芸術性と物語性が伝わってきます。


1964ユニコーン.フランス..jpg



2011年 オーストラリア発行「神話上の生き物切手」: このシリーズの一枚として、生命力あふれるユニコーンが描かれています。

広大な自然を持つオーストラリアらしい、力強くも幻想的なユニコーンの姿が印象的です。


ユニコーン.オーストラリア.2011.jpg



これらの切手は、単に美しい絵柄だけでなく、その国がユニコーンにどのような意味や価値を見出してきたかを教えてくれる貴重な資料とも言えます。

コレクターでなくても、そのデザイン性の高さや、背景にある物語を知ることで、ぐっと引き込まれる魅力がありますよね。

【まとめ:ユニコーンが教えてくれる、信じる心の力】

ユニコーンは、私たちに純粋な心の大切さや、見えないものを信じる力を教えてくれます。厳しい現実の中で、私たちが必要とする「希望」や「癒やし」の象徴として、これからもユニコーンの伝説は語り継がれていくでしょう。
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2025年04月22日

身近に存在する危険な植物−番外編1.コバイケソウ−

2025年4月新潟県佐渡市で山中から採取した有毒植物"コバイケソウ"を食べた70代女性が嘔吐・下痢症状を伴う食中毒になったと報道されました。 

オオバギボウシ(別名ウルイ)は、春先の若芽や葉柄は山菜として食べられます。

食べるのは若葉の丸まったものや葉柄で、葉柄だけは大きくなっても食べられます。

しかし地上に芽を出した若芽は、毒草の"コバイケイソウ"と似ているので注意が必要です。

"コバイケソウ"は、有毒で全草にプロトベラトリン等のアルカロイド系の毒成分を有します。

誤食すると嘔吐や痙攣を起こし、血管拡張から血圧降下を経て、重篤な場合死に至ることがあります。

若芽は山菜のオオバギボウシやノカンゾウの若芽に似ており、誤食による食中毒が毎年のように発生しているため注意が必要です。

特に新芽の時期は、食用山菜のウルイやギョウジャニンニクと外見が似ており、誤食による食中毒事故が頻発しています。誤食すると、嘔吐、下痢、手足のしびれ、めまいなどの症状が現れる可能性があります。

加熱しても毒が分解されないため注意が必要です

野山に出て山菜を狩りをしても種類の判定ができない植物は「採らない」「食べない」「売らない」「人にあげない」ことが大切です。



切手は2019年日本発行の「天然記念物シリーズ 第4集」の中の一枚で、オオバギボウシが描かれています。

オオバギボウシ.日本.2019.jpg


切手は2011年日本発行の「Pスタンプ 白山」の中に収められた一枚で、コバイケソウが描かれています。


コバイケイソウ.2011..jpg


切手は2016年日本発行の「乗鞍岳と高山植物フレーム切手」の中に収められた一枚で、コバイケソウが描かれています。


コバイケイソウ.日本.jpg
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2025年03月22日

身近に存在する危険な植物−7.ヒガンバナ−

ヒガンバナ(彼岸花)は、全草有毒な多年生の球根性植物です。

※全草有毒とは植物のすべての部分に毒性物質が含まれていることを言います※

日本全土に咲き乱れ、呼び名も数多くあります。

少し例を上げてみますと、曼珠沙華・地獄花・死人花・毒花・幽霊花・捨子花等などです。

ヒガンバナは、花全体にリコリンやガラタミンなど約20種の有毒アルカロイドをもっています。

特に球根に毒が多く含まれ、毒抜きせずに食すと、30分以内に激しい下痢や嘔吐に見舞われ、ひどい場合は呼吸不全や痙攣、中枢神経麻痺といった深刻な症状を引き起こします。

特に鱗茎にアルカロイド(リコリン、ガランタミン、セキサニン、ホモリコリン等)を多く含む有毒植物で、経口摂取すると吐き気や下痢を起こし、ひどい場合には中枢神経の麻痺を起こして死に至ることもあります。

ヒガンバナは、草姿がノビルやアサツキに似ている植物であることから、誤って食べて体調を崩すことがよくあります。

誤って食べた場合、特別な解毒剤などはないため、催吐薬や下剤を投与しての対症療法しか治療法はありません。

ヒガンバナは、球根1gあたりに約0.15mgのリコリン、0.019gのガラタミンを含んでいます。

要するにリコリンの致死量は10gなので、球根を1個食べても重篤な症状に至ることは基本的に先ず無いわけです。

精製された彼岸花の球根は、"石蒜(セキサン)"や"彼岸花根"の名で漢方薬として利用されています。

消炎作用や利尿作用があり、茎を刻んで搾取した汁で患部を流すと効果があるほか、根をすりつぶしたものを張り薬にすると、むくみやあかぎれ、関節痛を改善する効果があるとされています。

薬として使用するには、毒の量を調節できる正しい知識と的確な処置が必要なので、専門家でない限り家庭薬としての素人利用はしないのが安全です。

また、最近では彼岸花に含まれるガランタミンが記憶機能を回復させるとして、アルツハイマー型認知症の薬に利用されつつあります。

彼岸花の毒は経口摂取(口から食べる)することで影響がでますので、ただ触るだけでは問題はありません。




切手は2000年台湾発行の「台湾の毒草切手」の中の一枚で、ヒガンバナが描かれています。



彼岸花.台湾.2000.jpg


切手は2009年日本発行の「ふるさと切手旅の風景シリーズ 第6集」で奈良・明日香の橘寺と咲き乱れるヒガンバナが描かれています。


ふるさと切手.ヒガンバナjpg.jpg


切手は1992年韓国発行の「植物切手」でヒガンバナが描かれています。


ヒガンバナ.韓国.jpg
posted by 血液の鉄人 at 08:53 | Comment(0) | TrackBack(0) | 医学切手 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする